「公務員の年金って、民間と違うの?」
「共済年金って昔あったけど、今はどうなってるの?」
そんな疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
現在では、公務員も民間の会社員と同じ「厚生年金」に加入しています。
ただし、制度改正前に働いていた世代には「共済年金」という別制度が存在し、その名残として「年金払い退職給付」という仕組みが今も続いています。
この記事では、共済年金と厚生年金の違い、制度統一の背景、年金払い退職給付の仕組みまでわかりやすく整理します。
公務員の年金は今どうなっている?
現在、公務員も民間と同じ「厚生年金」に加入しています。
つまり、「共済年金」という制度はすでに存在しません。
ただし、管理や窓口は引き続き「共済組合(国家・地方など)」が担当しています。
そのため給与明細などには「共済」と残っており、ここが混乱のもとになっています。
共済年金とは?(昔の制度)
「共済年金」は、かつて公務員・教職員専用の年金制度でした。
民間の会社員が入る厚生年金とは別の仕組みで、運営も別々です。
| 対象 | 管理主体 |
|---|---|
| 国家公務員 | 国家公務員共済組合 |
| 地方公務員 | 地方公務員共済組合 |
| 教職員 | 公立学校共済組合・私学共済など |
当時は、民間=厚生年金、公務員=共済年金という二本立て構造でした。
共済年金と厚生年金の統合(2015年)
2015年10月1日、「被用者年金一元化」が行われ、共済年金は厚生年金に統合されました。
理由は大きく3つです。
- 公平性の確保
民間と公務員で給付水準が異なるのは不公平との指摘。 - 財政安定化
共済組合ごとの財政にばらつきがあり、少子高齢化で支えきれない懸念。 - 転職・再就職の増加
公務員と民間の行き来が増え、年金制度が分断されていると不便だった。
結果、現在はすべての被用者(民間・公務員)が「厚生年金」に一本化されています。
以前の公務員年金は“三階建て構造”
制度統一前(~2015年)は、公務員だけが特別な「職域加算」という上乗せを持っていました。
| 階層 | 民間 | 公務員(旧制度) |
|---|---|---|
| 1階 | 国民年金(基礎年金) | 国民年金(基礎年金) |
| 2階 | 厚生年金(報酬比例) | 共済年金(報酬比例) |
| 3階 | 企業年金・厚生年金基金(任意) | 職域加算(公務員独自) |
この「職域加算」が、公務員年金を“厚い”と言われる理由でした。
職域加算とは?
職域加算は、公務員としての職務に対して上乗せで支給される終身の特別加算でした。
生涯もらえる、いわば「年金のボーナス」。
- 財源:共済組合と国の拠出(公費含む)
- 受取:老後、通常の年金に上乗せして終身支給
- 対象:すべての公務員・教職員
しかしこの優遇が、民間との格差批判を招くことになり、2015年に廃止されました。
年金払い退職給付の登場(2015年〜)
職域加算は2015年の一元化で廃止され、代わりに導入されたのが 「年金払い退職給付」 です。
性格としては、「退職金の上乗せ」「積立ベースの給付」であり、公務員だけに残る“第3の支給”にあたります。
| 項目 | 職域加算(旧制度) | 年金払い退職給付(新制度) |
|---|---|---|
| 制度期間 | 〜2015年9月 | 2015年10月〜現在 |
| 給付方式 | 終身年金 | 一時金または分割(選択) |
| 財源 | 共済組合+国 | 共済組合積立(運用含む) |
| 性格 | 公費を含む上乗せ | 積立ベースの上乗せ給付 |
| 税区分 | 雑所得(終身年金) | 一時金→退職所得/年金→雑所得 |
つまり、終身でもらえる“恩給的加算”がなくなり、“積み立てた分をもらう退職金型”に変わったということです。
年金払い退職給付はどうやってもらう?
年金払い退職給付(制度上の名称は「退職年金」)は、退職時に自動で支給されるものではありません。
退職後に共済組合から届く案内に従って、本人が請求書を提出し、同時に受け取り方を選択する必要があります。
国家公務員・地方公務員・教職員のいずれも共通の仕組みで、請求書には「希望する受給方法を請求時に選択」と明記されています。
退職年金の構成
退職年金は、2分の1が「終身退職年金」・残り2分の1が「有期退職年金」という“半分ずつ”の構成です。
この構造は国家公務員・地方公務員・教職員すべて共通です。
| 区分 | 支給期間 | 特徴 |
|---|---|---|
| 終身退職年金 | 生涯支給 | 生涯にわたり継続支給(変更不可) |
| 有期退職年金 | 原則20年(240月) | 一定期間で終了。請求時に変更可 |
有期退職年金の選択肢
有期退職年金は原則20年(240か月)支給されますが、給付事由発生日から6か月以内に「請求と同時」に手続きを行うことで、次のいずれかを選べます。
- 支給期間を10年(120か月)に短縮
- 一時金として一括で受け取る
6か月を過ぎると選択はできず、20年支給が確定します。
このルールはすべての共済で共通しており、国家公務員共済組合連合会(KKR)・地方公務員共済組合連合会(地共連)・公立学校共済組合の公式資料にも明記されています。
参考:
・国家公務員共済組合連合会「有期退職年金」
・地方公務員共済組合連合会「退職年金制度について」
・公立学校共済組合「年金払い退職給付(退職年金)のしくみ」
受給開始年齢
受給開始年齢は原則65歳です。
ただし、次の範囲で繰上げ・繰下げの選択が可能です。
- 繰上げ受給:60歳から
- 繰下げ受給:75歳まで(昭和27年4月2日以前生まれの人は70歳まで)
この受給年齢の選択肢も、全ての共済で統一されています。
どんな人がもらえる?勤務期間の条件
退職年金(年金払い退職給付)を受け取るための要件は全国共通で、次の3点です。
①1年以上の引き続く組合員期間
②退職していること
③65歳到達(または65歳以後の退職)。繰上げ・繰下げの選択肢あり。
これらの条件は、国家公務員共済組合連合会(KKR)、地方公務員共済組合連合会(地共連)、および公立学校共済組合のいずれにも共通して明記されています。ポイントまとめ
誤解されがちですが、「10年以上勤続」という条件は存在しません。「有期部分の支給期間を10年に短縮できる」ため、ここから勘違いされるケースがあるのでご注意ください。
金額の目安
支給額は、在職年数と標準報酬(俸給)に応じて積み立てられる金額をもとに決まります。
実際には、給与の約1.5%が毎月積み立てられ、退職時に利息を加えて支給されます。
一般的な目安は次の通りです。
| 勤続年数 | 給付額の目安(有期+終身の合計) |
|---|---|
| 20年 | 約70〜100万円前後 |
| 30年 | 約150〜200万円前後 |
| 40年 | 約200〜300万円前後 |
退職金と比べると小さい金額ですが、老後資金の上乗せやセミリタイア資金の補助としては十分な効果があります。
税金の扱い
| 受取方法 | 税区分 | 主な控除 |
|---|---|---|
| 一時金で受取 | 退職所得 | 退職所得控除あり(優遇大) |
| 年金形式で受取 | 公的年金等の雑所得 | 公的年金等控除あり |
どちらも税優遇がありますが、まとまった金額を受け取るなら一時金、老後の安定収入を重視するなら年金形式を選ぶケースが多いです。
よくある質問・誤解
気になる疑問にお答えします。
- 年金払い退職給付って、退職金と同じものですか?
-
いいえ、別の制度です。
退職金とは別に支給される「上乗せ給付」で、2015年に職域加算が廃止された際に導入されました。
共済に1年以上在職していれば支給対象になります。 - いくらくらいもらえるのですか?
-
在職年数と俸給(標準報酬)によりますが、
目安として20年勤続で数十万円、30〜40年勤続で150〜300万円前後です。
退職金ほどではありませんが、老後の上乗せ資金としては十分な金額です。 - 誰がもらえるの?勤務期間の条件は?
-
全国共通で、次の3つの条件を満たす人が対象です。
① 共済組合に1年以上在職していること
② 退職していること
③ 65歳到達(または65歳以後の退職)
なお、繰上げ(60歳〜)・繰下げ(75歳まで)受給も可能です。 - 「10年以上勤務しないともらえない」と聞いたけど?
-
誤解です。
支給要件は1年以上でOKです。
「10年」という数字は、有期部分の支給期間を10年に短縮できるという意味で、勤務年数の条件ではありません。 - 終身と有期って何が違うの?
-
退職年金は「終身退職年金」と「有期退職年金」を半分ずつ受け取ります。
- 終身:生涯にわたって支給(変更不可)
- 有期:原則20年(請求と同時なら10年または一時金に変更可)
- 請求しないと自動的にもらえますか?
-
いいえ。
退職後に共済組合から案内が届くので、自分で請求書を提出しなければ支給されません。
また、有期部分の10年・一時金への変更は**「給付事由発生日から6か月以内・請求と同時」**が条件です。 - 税金はどうなる?
-
- 一時金として受け取る場合 → 退職所得(退職所得控除あり)
- 年金形式で受け取る場合 → 雑所得(公的年金等控除あり)
どちらも税優遇がありますが、退職金と一緒に受け取るなら一時金のほうが有利になるケースが多いです。
- 定年前に辞めてももらえるの?
-
はい。
共済組合の在職期間が1年以上あれば、定年前でも退職時に資格が発生します。
転職や独立後でも、共済期間が残っていれば後に受給できます。 - 今後も制度は続く?
-
はい。
「年金払い退職給付」は、共済年金と厚生年金が統一された2015年以降の恒久的な制度です。
今後も公務員の上乗せ給付として継続される見込みです。
まとめ
2015年に共済年金と厚生年金が統一され、それまで公務員だけにあった「職域加算」は廃止されました。
その代わりに導入されたのが、「年金払い退職給付」です。
これは退職金とは別に支給される上乗せの年金制度で、共済に1年以上在職していれば支給対象になります。
有期部分については、退職後6か月以内の請求時に年金(20年・10年)または一時金を選択できます。
定年前に退職・転職しても、共済期間が残っていれば受給可能です。
| 項目 | 以前(共済年金) | 現在(厚生年金+共済) |
|---|---|---|
| 制度名 | 共済年金 | 厚生年金(共済経由) |
| 対象 | 公務員・教職員 | 公務員・民間共通 |
| 給付構造 | 職域加算あり(三階建て) | 年金払い退職給付に置換(上乗せ給付) |
| 管理主体 | 各共済組合 | 厚生年金(窓口は共済組合) |
公務員の年金制度は、かつてよりシンプルで公平な仕組みになりました。
その中で「年金払い退職給付」は、今も残る公務員ならではの上乗せ制度です。
若手の方も、「自分が将来どのくらい受け取れるのか」を知っておくことで、退職金や老後資金の計画をより現実的に立てられるようになります。

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